▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼
イセリナと魔法のはちみつ
企画・原作:清原 登志雄
校正:橘 はやと/橘 かおる
イラスト:姫嶋さくら
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲



 昔々のヨーロッパ。ある美しい国に、イセリナという女の子がいました。イセリナは、優しいおばあさんが大好きでした。
イセリナのおばあさんは暗い森を抜けた家に1人で住んでいました。

『おばあちゃん、元気にしているかな。1人で暮らしているけど大丈夫かな』

イセリナは、優しいおばあさんの事をいつも思っていました。


ある日、郵便ポストに、おばあさんから手紙が届いていました。
手紙には、おばあさんが病気になって寝込んでしまったと書かれていました。
大好きなおばあさんが病気になった事を知ったイセリナは泣きそうになりました。その様子をみたお父さんが、

「イセリナは、おばあさんが好きだからねえ。お見舞いにいってあげなさい。おばあさんは、きっと喜んでくれるよ」
「うん、わかった」
「森の中は気をつけていきなさい。クマがでるからね」

そう言うと、お見舞い用のリンゴをバスケットに入れてイセリナに渡しました。
おばあさんの家は森を抜けた先にありました。

「クマ、でないかな、こわいな」

イセリナは駆け足で森の細い道を歩いて行きました。森は木が茂っていて薄暗く、いつの間にか道に迷ってしまいました。
日が沈み辺りが暗くなってきます。イセリナは木の下でしゃがんで震えていました。

「この森、薄暗くて怖いよう」

イセリナは寂しくて下を向いていると、

「ガオー」

木の陰から、おそろしいクマがあらわれました。

『きゃークマだー』

震えているイセリナにクマは近づいてきます。イセリナは怖くて泣きながら叫びました。

「パパ!助けて」

その様子をクマはじっと見つめていましたが、イセリナに恐る恐る近づくと、震える手で頭を優しくなでました。
クマは側に座りビクビクしているイセリナをそっと抱きかかえます。クマの暖かい手のぬくもりがすこしずつ伝わってきました。
はじめ、イセリナはクマが怖かったのですが抱きかかえられるうちに少しずつ落ち着いてきました。クマはイセリナの手を握り

「こ、こんな森の中でどうしたの?」

と訪ねました。イセリナは震えながら

「私、道に迷ってしまったの」

クマはイセリナの様子をジーと見つめていましたが

「わかった、僕についてきなさい」

クマが、つれていってくれたのは暖かな暖炉のある家でした。家に入るとクマは暖かいスープを作ってくれました。
クマはイセリナがおいしそうにスープを飲んでいる様子を見ながら訪ねました。

「どうして、こんな森に1人で来たの」
「大切なおばあさんが病気になったので、このリンゴを届けようと思ったの」

イセリナは顔を上げて

「どうしてクマさんは、私を家まで案内してくれたの」

クマはジーと話を聞いていましたが

「僕には友達がいない。僕の友達はみんな人間に捕まってしまった。だから、本当は人間が怖かった。
 でも君が暗い森でひとりぼっちで泣いているのを見て寂しい気持ちが良く分かった」

クマはため息をつき窓から外の様子を眺めて

「明日、森の出口まで案内してあげるね。君のおばあさんは、病気みたいだから僕の蜂蜜をあげるよ。
 僕の蜂蜜は元気になる栄養満点の魔法のような蜂蜜だから食べさせあげなさい」

 次の日、イセリナはクマから元気の出る蜂蜜をもらい、森の出口まで案内してもらいました。
イセリナは歩き続けおばあさんの家へ無事につくことができました。


イセリナは早速、クマからもらった蜂蜜とリンゴをおばあさんに食べてもらいました。
蜂蜜をなめた、おばあさんはたちまち元気になって、イセリナを抱きしめました。

「イセリナ、あんな暗い森を良く1人で歩いてきたね。怖かっただろう」

イセリナは笑いながら

「ううん、大丈夫だった。森のお友達がすごく優しかったから」

そうつぶやいてイセリナはクマからもらった蜂蜜を見つめて

「クマさん、優しいあなたを最初は怖がってごめんなさい。クマさんの蜂蜜のおかげでおばあさんは元気になりました。
 本当にありがとう。人間が自然に優しかったら怖いクマさんとも仲良くなれるんだね」

おばあさんと、イセリナが抱きしめあう様子を窓の外から、クマがこっそりと幸せそうに眺めていました。クマは下を向き

「イセリナ。君みたいな優しい人間が沢山居てくれたら僕も人間ももっと幸せに生きられるだろうな」

クマは笑い静かに森へと帰っていきました。



▲▲▲▲2014年8月13日 完結▲▲▲▲