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さわやかな風になれ
企画・原作:清原 登志雄
校正:橘 はやと/橘 かおる
イラスト:姫嶋さくら
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さわやかな風に草木が揺れる夏の日の事です。青い鳥が風のそばに寄ってきて訊ねました。
「風さん、そんなに慌てて何処へいくの」
「みんなに幸せを届けに行くんだよ」
「つらい事が多い世の中なのに?」
「辛いことが多い世の中だから、1つでも多く幸せを感じて欲しいと思っているの。
みんなは幸せになるために生まれてきたのだから」
風はそう言いながら去っていきます。風は気の向くままに進むと花畑に出ました。
小さなつぼみの白い花がユラユラとゆれています。つぼみの白い花は風に聞きました。
「風さん、私のお父さんやお母さんは、どこにいるの?」
風は優しい声で答えます。
「君たちに希望を託して風の中に消えていったよ」
「じゃあ、もう会えないの?」
「お父さんとお母さんは君たちの中にいるから、いつでも会えるよ」
「お父さん、お母さんが幸せだといいな」
「お父さんと、お母さんは幸せの種をまいたの。
だから君たちが幸せなら、お父さんとお母さんもきっと幸せだよ」
風が進むと大きな森が見えてきました。
照りつける太陽のもとで一生懸命に働く蟻が風を見つけて言いました。
「風さん、自分は暑い中、毎日毎日働いてばかりですが全然、生活が楽になりません」
風は蟻をさするように吹きぬけながら答えます。
「苦しさ中でも、あきらめず心の輝きを失わない君はすばらしいです。
心の成長は悲しみを知る事でなされるからね」
「風さん、輝きってなんですか?」
「苦しくても正しく生きる事。みんなを幸せにしたいと思うこと。
その思いの連続が輝きをうむでしょう」
風は、木漏れ日の中を走り抜けキラキラと光る小川を空から眺め、
夢のような花々の香りを運んでいきます。
森の終わりが見えてきたところでハチが風に声をかけました。
「風さん、貴方はどうしていろんな事を知っているのですか?」
「私は世界中を走り回っているからこの世の素晴らしさを知っているのです」
聞いていた森の動物達は風に訊ねます。
「風さんの見た、素晴らしいものってなんですか?」
風は静かにゆっくりと答えます。
「戦いという悲しみの中でも輝きを放つ大自然。
綺麗に整理された町並み。高い空から眺めた大地。
そして、新しく生まれてくる命。だけど本当に尊いモノは目に見えない」
「……」
風は動物達の頭をなでるように吹きながら
「私は、この世が素晴らしさで満ちている真実をみんなに届けらる風になりたい」
言い残すと大空へ舞い上がっていきました。
▲▲▲▲2014年8月29日 完結▲▲▲▲