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作品名:
幸せなクリスマス
原作:清原 登志雄
校正:橘 はやと / 橘 かおる
イラスト:姫嶋 さくら
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【ひとりぼっちのクリスマス】

小雪が降る、クリスマスイブ。暖炉に暖まりながら女の子がせっせと毛糸で赤い手袋を編んでいました。
カチコチカチコチ。誰もいない静かな部屋で時計の針を刻む音だけが響いてきます。女の子の名前はエルフィール。
大好きな男の子(モーリス)へ贈るクリスマスプレゼントをせっせと編んでいるのでした。
チラと時計を見ると午後9時を回っていました。

「早く仕上げないと」

エルフィールは手袋をせっせと編もうとしますが、気が焦って中々うまくいきません。
深夜になり、ようやく手袋が編み上がりました。

「ふう~やっと出来たわ…指が痛い」

ため息をついて手袋を見つめました。しかし、焦って編んだため手袋は左手と右手の大きさが
バラバラでした。時計を見ると日付が変わっています。仕方なく溜息をついてベッドにもぐりこみました。
モーリスに手袋を手渡す様子を思い浮かべながら

『歪な手袋だし受け取ってくれないかも。私の事、嫌わないかな。ひょっとすると、突き放されるかも』

不安でいっぱいになり、眠れずクリスマスの朝を迎えました。
起き上がり、窓から外を覗くと小雪が降っています。昨日、編んだ歪な手袋を眺めて、深く溜息をついた後

「私の思いなんて…小雪のようにはかないものだわ」

そう言ってベッドに座り床を眺めていると

『あなたは自分の優しさに気づいていません。
 男の子が欲しいのは、奇麗に編んだ手袋ではなく貴方の優しさであり真心です。それを伝えなさい』

誰かに呼ばれたような気がして顔をあげました。その時です。
(リンゴーン)ベルがなったので玄関に出かけ、恐る恐るドアをあけました。
小雪が舞う中、モーリスが大きな箱を持って立っていました。彼は顔を赤くしながら

「ク、クリスマスおめでとう。プレゼントを持ってきたよ」

そう言って箱を手渡しました。エルフィールは箱をゆっくりと受け取り涙を流しながら

「ありがとう」

2人は小雪の舞う中、静かに抱きしめ合いました。



▲▲▲ 2014年1月27日完結 ▲▲▲▲